私は地獄を見続けています。これ以上被曝者を増やしてはなりません。

井戸川かつたかさん インタビュー
福島県知事選予定候補 井戸川かつたかさんが語る
世界最大の事故に世界最大の救済を 被曝から県民の命と健康を守る
帰還強要は犯罪だ 国・東電・県は被害者の声を聞け
  • ■原発震災から3年半、立候補を決意された最大の理由は何でしょうか。

     福島県知事の事故後の様子を見ていて、なぜ早くはっきりものを言い、県民に報告しないんだろうと思っていました。もう一つ、どうも県民不在で決められている。県民の大事な生命、権利、財産にかかわることに県知事が取り合わず、ワンサイドで決めてきた。

  •   「100ミリシーベルト(mSv)以下では放射線の影響はない」と言わせたり、20mSvの学校に子どもたちを通わせたり。20mSv以下になったから、と帰還政策を進めています。世界中にこんなことはない。どれをとっても人間にとって不幸なことを黙認している人が果たして県知事でいいのか。危機管理の観点からもとても恐ろしいことです。

  •  スピーディ(放射能影響予測)の情報隠しとか、定かではありませんが40万人避難計画の拒否とか、県民の知らないところで決まった結果、多くの県民が被曝した。それを救わないといけません。国にも東京電力にもはっきりものを言い、県民が必要とする情報をどんどん出す。県民とよく話し合う。その意見に沿って県政を行わなければなりません。

  •  県庁と県民の距離がこれほど離れてしまったのは執行者の責任です。それを解消する。何よりも、明日が見えるようにする。これはトップの仕事です。それがない、何としても声を上げなければ、と立候補を決意しました。

  •  世界最大の事故ですから、世界最大の救済があってしかるべきです。どう見ても、世界最小の救済しかされていない。情けない。県のトップは、いかなる理由があろうと県民側に立って、県民の救済に尽力すべきです。


    ■被曝から県民の命と健康を守ることが最重要課題だと思います。そのための施策としてどんなことを訴えますか。

     東電が事故前に引用していた被曝防止基準があります。その基準で言うと、もう福島県内ではほとんど人は住めない。どうするか。一番先に必要なのは対話です。情報公開し、県民と話し合い、県民が判断する。県民参加の議論が絶対条件です。

  •  危険な個所は堂々と表示し、県民に見てもらう。立入禁止にする。もちろん飛散もさせない。「私は避難します」という人も出てくるでしょう。それが自然です。自然な姿で、住むか離れるかの選択をさせてあげないといけない。住む人には特別の手当が必要ですし、離れた人にも同じく、生活も生業(なりわい)も奪われたわけですから、それに県の事業としてかかわる。県民の望む方向に県が従う、ということです。

  •  30キロ圏の図を見ていると、まさに被害者無視、被曝者無視の施策です。県民は「ふざけるな。私は被曝を望んでいない」と言うべきですが、なかなか声を出しづらい。そこを代わって声を上げ、一緒に考え、適切な対応をする。それが行政の仕事です。

  •  子ども・被災者支援法の実現を待っていられません。福島は今そんな悠長な状況ではない。福島県条例でやればいいんです。国の予算が付く付かないではなく、県の事業でやり、費用は東電に請求すればいい。簡単なことです。誰が事故を起こしたんですか。ウクライナのいいところに学び、保養施設などをどんどん作って世界からよくやったと言われるような施策を行うべきです。

  •  全県民、1mSv以上の地域にいた人全員に健康手帳を交付する。将来何かトラブルがあったときの保障です。それを県がやる。国だって、県がやると言えばついてきます。地方分権なんだから、どんどんやればいい。

  •  そして医大改革です。放射能の影響はないと言い、県民は誰も信用していない。いつまでも言わせておくわけにいきません。そういう連中を入れ替え、真に県民に寄り添った考えを持つ人に健康手帳のあり方などを検討してもらう。不評を買っている県民健康調査は廃止します。あんなものが白日の下にあること自体が福島県の恥です。

    ■立ち向かう相手は、与野党相乗りの内堀雅雄副知事です。内堀候補ではなぜだめなのでしょうか。

     私は今まで内堀副知事にいろいろ要請してきましたが、形になったものはない。その人が知事になって福島県がよくなると思いません。現佐藤(雄平知事)県政はウソが多すぎます。ウソを続けるために部下を使い、組織を使って言い訳する。やってはいけないことです。

  •  最近分かったのは、原子力災害対策本部の現地対策本部から町と住民が排除された問題です。本来、町は現地対策本部に加わっていたのが、3月15日未明に事故対策統合本部が設置された時点で外された。一番大事なところを外すのは前代未聞。近代国家では、あり得ない。世界史上に例のない悪事じゃないでしょうか。県は対策本部のメンバーです。内堀さんも入っていた。ならば、なぜ町を入れないんだと言わなくてはならない。それをスルーした人が知事選に出る資格がありますか。犯罪者ですよ。

  •  福島県の為政者たちは住民の被曝防止をしましたか。一方的な「帰ってこい」政策は人権無視です。私は聞きました、「帰ってやがて発症したとき誰が責任をとるのか」と。県の答えは「東電と国です」。県の帰還政策に県としての責任をうたってないんです。あきれて言葉にもなりません。
  •  子どもたちを被曝させながら県内に住まわせる。屋内運動場で運動させ、学校給食で放射能が混じったものを食べさせる。ある母親から「子どもは学校から帰ったら寝る」と聞きました。ブラブラ病になりつつある。とんでもない虐待です。福島県の存亡にもかかわってきます。

    ■全国の市民に訴えたいことは何ですか。


     依存をやめましょう。誰かがやればいい、できなければあきらめる、ではなく、自分で汗をかいて、かいた汗に喜びを感じる人たちが増えることを願っています。

  •  再稼働の問題では、福島の事故の過酷さを目を閉じないで全部見てほしい。原発は得る利益より失う利益のほうが100倍は多いでしょう。避難計画と言いますが、避難生活計画が入らなければナンセンス。避難は受け入れられても、避難生活の受け入れは無理ですから。原発は壊れないうちに片付けなければいけない。そうすれば避難せずに住み続けられます。

  •  もう一つ、脱原発を掲げる人たちが本当に福島県民の抱えている悩みを分かってくれているのかな、という思いがあります。フクシマの何が悪くて脱原発なのか、見えない。私たちは脱被曝、そして生活再建です。

  • ■ありがとうございました。

  • ●井戸川かつたかのインタビュー記事が雑誌に掲載されました。
  • 『美味しんぼ』鼻血問題の前・双葉町長が県知事選立候補! 「変人だと叩かれても言う。今の福島は脱出すべきです」(「週刊プレイボーイ」2014.10.14)